バブル期特有の薄っぺらさがなくなり、人間的な深みが生まれたともいえるかもしれません。

「進撃の巨人」という作品は、若いのに深みのある人間となるべく成長し続けている諫山創という人物が描いている漫画として、時代の転換期の象徴となりうる作品だといえます。

そんな「進撃の巨人」に登場したヒッチ・ドリスは、登場時はバブル期の薄っぺらい若者そのもので、話が進むにつれて、ヒッチは薄っぺらいフリをしていただけの、言うなれば、バブル期の残滓といえる存在であることが明らかになっていきます。

進撃の巨人の世界では、壁の中の恒久的な平和が破壊され、そこから目を背け続けていた人たちがこれ以上目を背けることが困難になった時代が描かれています。

ヒッチ・ドリスは、そんな時代と自分の将来を考えなければならない年代とがリンクしていました。

そんな中で、ヒッチ・ドリスがどのように決断し、生きていくのでしょうか。

今回の記事ではそんなヒッチ・ドリスに注目いたします。

ヒッチ・ドリスは、season1およびseason3に登場するキャラクターです。

一体どのようなキャラクターなのかについても注目していきます。

ヒッチ・ドリスの登場は、進撃の巨人コミックス8巻第31話、アニメ版は23話｢微笑み｣です。

ストヘス区憲兵団支部の廊下で上官を待っているヒッチやマルロの元に、昨日女型の巨人として大立ち回りを演じ、寝坊したアニ・レオンハートが合流するところから始まります。

粛々と上官が来るのを待つ新兵の中で、ヒッチは構わずぺちゃくちゃとお喋りをはじめ、同僚のボリスから「ヒッチ…お前みたいなバカ女が憲兵団に入る方法は一つしか無い」というセリフを吐かれます。

言わずもがな、実力では無く、枕営業で憲兵団に入ったのだろうという意味です。

憲兵団入団の道は、訓練兵で上位10位以内に入ることが基本的な前提。

当該シーンのアニメ版では少なくとも10名の新兵が確認できますが、無駄口を叩いているのはヒッチ一人という始末。

さすがエリート集団と言ったところでしょう。

これが将来デニスのようになるのですから、大した堕落機関です。

実力で入団するよりは、堕落した上官に枕営業をかけた方が効率的と思うのは阿呆な男の性。

枕営業で入団した女性団員がいたら、是非とも登場していただきたい！枕営業はハイリスクローリターンが常です。

調査兵団と違って、憲兵団は人事部署があってもおかしくありません。そういった観点からも枕営業での就職は困難だといえる1つの根拠となります。

ボリスのセリフを聞かされたヒッチは「…えーなにそれわかんなーい…言ってみろよ」と答えました。

アニメ版ではヒッチ役の声優、渡辺明乃さんの、「言ってみろよ」のセリフが怒気の混じった凄みのある演技が見事でした。

枕営業的なことをして入団したといった話題は、ヒッチ的には禁忌なのだろうということがはっきりと伝わってきます。諌山先生は別マガの企画で「ヒッチとマルロはギリギリ10番以内だった」と答えていますので、枕営業のようなよそ道はせず、真摯に訓練に取り組んで得た憲兵団入団だったのでしょう。

至極真っ当な「憲兵団入団」だったということになります。決して枕営業などということはなく、自分の実力で掴み取ったポジション。

ヒッチ登場時に印象的なセリフを残しています。

「確かに想像以上に腐ってたねーこの組織… まあ…だから選んだんだけどさー」

このセリフにヒッチの人生観が集約されているといえるでしょう。

それが、まさにバルブ期の若者そのとおりです。楽するために一生懸命勉強して、受験戦争で勝ち残って、良いところに就職したら、後は人生はパラダイス。

…ではなく、実はそこがスタートだったと、浅はかなことこの上無しです。

憲兵団は我々の世界では警察官なので、市民から信頼を得ることは第一の仕事です。ヒッチの場合、まだ信頼と言うより、親しみといったところでしょうか。それを獲得しているのは有能の証。枕営業で入団するような人物であれば、このようなことにはならないでしょう。

原作オンリーで、アニメを見ていらっしゃらないという方で、可愛いと感じられた方は少ないかもしれません。

しかし、アニメ版進撃の巨人で「いい意味で」化けました。声優の渡辺明乃さんの演技力もあって、不覚にもヒッチを可愛いと感じてしまったという進撃ファンは少なからずいるのではないでしょうか。

ヒッチはいったん物語から遠ざかりますが、コミックス15巻で再登場します。お尋ね者となった調査兵団を捜索するためマルロとツーマンセルで森の中に入り、逆にリヴァイ班に捕まるヒッチたち。有名人であるリヴァイに向かって「あなた達のせいでストヘス区の人民が100人以上死んだのを知ってますか？」とはっきりと伝えます。

このようなセリフが言えるヒッチの度胸はたいしたものではないでしょうか。リヴァイ班に捕まる前からアニについても心配していることを伺わせるセリフがあり、可愛い上に美人のアニと、本当は友達になりたかったのか？と推測もできる描写といえるでしょう。

感極まったのかリヴァイに対して、アニについて言及しています。何事においても「それは他人事」的な態度を取っているヒッチ。

普段は自分を守っているような印象が強いキャラクターでした。しかし、このシーンで実は情に厚い人間的に可愛い女性だということが分かります。

アニメ｢進撃の巨人｣でヒッチ・ドリスを演じるのは声優の渡辺明乃さん。大沢事務所に所属されている女性声優です。ゲームや映画の吹き替えを多く担当されていらっしゃる声優さんです。

また、主人公の幼少期などを演じることも多いです。

渡辺明乃さんは、数々のアニメ・ゲーム・映画の吹き替え声優を担当されていらっしゃいます。

一部ではありますが、以下に渡辺明乃さんの担当されてきたキャラクターを記載いたします。まずはアニメ・ゲームからです。参考程度にご覧ください。

コードギアス 反逆のルルーシュ - ヴィレッタ・ヌゥ、少年時代の枢木スザク、アリシア・ローマイヤ

灼眼のシャナ - “夢幻の冠帯”ティアマトー

To LOVEる -とらぶる- - 結城リト / 梨斗、夕崎梨子

クロスファイト ビーダマンeS - 不知火ビャクガ

クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ! - ジャクリーン・フィーニー〈ジャッキー〉

アサシン クリード II - レベッカ・クレイン

そして、洋画の吹き替えに関しては女優のクリステン・リッターを担当されています。

他には、以下の作品等にも吹き替えで出演されています。

イングリッド -ネットストーカーの女- - イングリッド〈オーブリー・プラザ〉

プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角 - アンディ・ウォルシュ〈モリー・リングウォルド〉

ホンモノの気持ち - ゾーイ〈レア・セドゥ

他にも数多くの吹き替え作品が存在しており、アニメ・ゲーム・映画吹き替えと非常に幅広い分野でご活躍されていらっしゃる声優です。

今回注目してきたヒッチ・ドリスは、進撃の巨人において少し影が薄いサブキャラ的なキャラクターです。

しかし、情に厚かったり人間らしさがあふれるキャラクターであり、確かな魅力を持っている人物とも言えるでしょう。

進撃の巨人は非常に個性豊かなキャラクターたちが登場し、カッコいいキャラクターから可愛いキャラクター、面白いキャラクターまで。

様々な人物が登場します。

今回はその中でも「ヒッチ・ドリス」に注目してきましたが、他のキャラクターも詳しくチェックすることでより「進撃の巨人」の物語、作品の魅力にどっぷりと浸かることができるでしょう。

今後も進撃の巨人から目が離せません。