ソマリアはどんな国?
少し、世界情勢に詳しい人なら、「ソマリア」と聞くと「治安の悪さ」や「社会情勢が不安定」と思い浮かべるでしょう。しかし、ソマリアの治安が悪いことは知っていても、どんな国か知っている人は少ないのではないでしょうか。
ソマリアの位置
ソマリアの正式名称は「ソマリア連邦共和国」で、アフリカの東に位置しており、別名「アフリカの角」と呼ばれています。ソマリアは北のジブチ共和国、西側にエチオピア連邦民主共和国、南西部をケニア共和国と接しています。アデン湾に沿った海岸線には、少しですが海岸平野があり、グバンと呼ばれています。また、年間を通して雨はほとんど降らず、エチオピア高原からインド洋に流れるジュバ川やシュベリ川のみが水の流れる場所となっています。
ソマリアの気候
ソマリアの海岸部は高温多湿で、内陸は砂漠気候です。
ソマリアの歴史
10世紀から14世紀にかけて、遊牧民族のソマリ族がアラビア半島から移り住み、アラブやペルシアと交易をはじめたことが、国の始まりと言われています。この頃からソマリアはイスラム化していったと考えられています。19世紀後半になると、イギリスがソマリア北部を領有して「ソマリアランド」と呼ぶようになりました。その後、イタリアが南部を占領して、そちらも「ソマリアランド」と呼ばれるようになりますが、1960年には南北が統合してソマリア共和国が発足します。その後、クーデターで軍が実権を握り「ソマリア民主共和国」に国名が変わりましたが、1970年には社会主義国を宣言してソマリ社会主義革命党の一党独裁体制になりました。1991年にバレ政権が崩壊して以降、20年以上にわたって無政府状態となり、氏族集団による内戦状態が続いていましたが、2012年に国際社会の支援の下、ハッサン・シェイク・モハメッド大統領によって国家再建を進めています。
ソマリアの現在の治安は?
1992年には、国連がPKO部隊である多国籍軍を派遣して、治安維持に努めますが、1993年にアメリカ軍がソマリアから撤退。2000年にハッサン暫定政権が樹立されますが、内戦は収まらず国家はさらに分断されていくことになります。
イスラム過激派組織アル・シャバーブは弱体化しつつありますが、首都モガディシュをはじめ、ソマリア全土で未だに大規模なテロ活動を続けています。また、ソマリア北部を中心にISILソマリアが組織され、首都モガディシュを含めてソマリア国内でテロ活動を行い、2017年10月には、モガディシュで死者数百人に上る過去最悪の爆弾テロが発生しました。
大規模な組織のテロ行為だけでなく、氏族間衝突や一般犯罪も頻発しており、予断は許されない状態です。
ソマリアに関する外務省報告(治安)
ソマリアは、以前から治安の悪さで外務省から渡航中止を求められていますが、2018年現在でも変わりはありません。ソマリアは、「ここが治安の悪さが1番」と言うところはなく、ソマリア全土でレベル4の「退避してください。渡航はやめてください(退避勧告)」が外務省から継続して発令されています。そのため、ソマリア(ソマリアランドを含む)全土への渡航は、どのような目的であっても、やめてください。また、すでに滞在している人は「直ちに退避してください」と注意喚起されています。
特に、首都モガディシュや政府、国連関連施設、空港、ホテルなどへのテロ行為は頻繁に起こっています。また、ソマリアには、日本大使館がありません。在ケニア大使館が兼任しているので、不測の事態が起こってもすぐに対処するのは困難でしょう。なお、隣国のジブチやエチオピア、ケニアにもそれぞれ危険情報が出ているので、併せて確認するようにしてください。
ソマリアの現在の治安ランキングは?
世界の163ヶ国を対象にした世界治安ランキングを見てみると、ソマリアは163国中162番目となっています。最下位の163位はアフガニスタン、161位はシリアといずれも治安の悪い政情の不安定な国として知られています。このことからも、ソマリアはとても治安が悪い国と言うことがわかります。
安全?危険?海外旅行に世界治安ランキング
平均寿命も50歳とアフガニスタンの60歳、シリアの75歳に比べて、とても短いことがわかります。これは続く内戦状態やテロで多くの人命が失われ、医療行為も難しくなっていることがは理由です。また、子供の5人に1人は5歳まで生きることができません。
ソマリアの治安悪化の原因と現状
ソマリアは、70年代にアメリカやソ連から経済と軍事的援助を受けるようになります。その後、バレ政権が崩壊して、氏族間闘争が激化し一気に内戦状態になりました。また、食料の略奪なども常態化し国連や赤十字、NGO団体の援助活動も阻害されるようになりました。そのため、国連は初めてのPKF活動を展開しますが計画は失敗に終わり、国連の撤退と内戦状態の継続という最悪の結果になりました。
ソマリアは未だに内戦状態が続き、無政府状態にあると言えます。また、世界各国で人道的活動を行っている「国境なき医師団」も治安の悪化に伴いソマリアから撤退を余儀なくされています。ソマリアは、現在でも治安の悪さで世界トップレベルと言えるでしょう。
ソマリアの治安の不安要素である海賊
ソマリアの問題は内戦だけでなく海賊も大きな国際問題になっています。原因は、日本を始め多くの国がソマリアの海で魚を乱獲したことにより、漁民が困窮したことで海賊化したと言われています。海賊となった漁民は、金品の強奪や誘拐を行い、国際海運を脅かしています。
しかし、国際的な動きにより、2017年には海賊の事案は9件と2011年の237件と比べて激減しています。ソマリアは、国内の治安の悪さだけでなく、海域の治安も安全ではありませんが、貧困問題が解決しない限り、海賊の問題はなくならないと言われています。
現在のソマリアで女性の治安は?
ソマリアでは、20年以上の内戦や政情不安で、女性に対する治安の悪さが抜きんでています。多くの女性や少女がレイプなどの性的被害におびえて暮らしているのが現状です。ソマリア政府は「性暴力と戦う」としていますが、国の治安部隊関係者ですら加害者となっています。被害を受けた女性は、加害者の報復や司法制度の不信から被害を訴え出ないことが多く、数多くの女性が泣き寝入りをしているのが現状です。
また、社会に根強く残っている女性差別からFGM(女性性器切除)が未だに行われており、国際的な問題となっています。これは、4歳から10歳の間に、麻酔もせずに女性器の一部を切除する儀式で医療従事者でない者が行うため、非常に不衛生で痛みを伴うものです。
ソマリアで現在、治安の良い場所は?
未だに内戦状態にあるソマリアは、治安の悪さから外務省からも危険レベル4の「退避勧告」が出てるいので、観光をしようと考える人は少ないでしょう。しかし、ヨーロッパや中国からはツアー会社を通して観光に来る人が増えているようです。ただし、個人が自由に楽しむ旅行は難しく、ツアー会社のパッケージ観光のみとなっています。
首都のモガディシュやソマリアランドは、ツアー会社の指示に従って観光することができます。ソマリアランドでは、ベルベラビーチやラース・ゲールの洞窟壁画を楽しめます。ただし、厳格なイスラム教の国なので、女性が肌を露出することは厳禁です。水着も長袖とひざ下までの長さのあるものが必要になります。
外務省HPの「海外安全情報」で必ず治安をチェック
ソマリアだけでなく、海外に行く時は、外務省のHP「海外安全ホームページ」を必ずチェックしましょう。このホームページは、自分の行きたい国を入力して検索すれば、その国の危険レベルが一目でわかるようになっています。
その他にも、テロや誘拐、感染症、治安など、旅行や滞在する際に重要な情報も明記されています。外務省の情報以外にも、ネットなどでその国の情報を集めることはとても大切です。
外務省海外安全ホームページ
外務省のホームページ。各国の治安や情勢を紹介
現在のソマリアに行くことは困難
治安の悪さで世界トップレベルのソマリアは、現在も旅行で訪れることは困難です。内戦やテロで疲弊したソマリアですが、少しずつ観光客が訪れるようになり、復興の兆しも見えています。しかし、まだ行くことは困難なソマリアですが、いつかは誰でも観光に訪れるようになることを祈ってやみません。
治安の良い国と治安の悪い国の一覧です。