『君の名は』「新海誠(しんかいまこと)」監督のアニメーションで、2016年に公開され興行収益250億円を超える大ヒットを記録しました。
アニメファンはもちろんのこと、普段アニメを観ない一般層まで虜にした本作は、主人公の声優に俳優の「神木隆之介(かみきりゅうのすけ)」さんを起用する等、話題となりました。
「新海誠」監督の作品に共通して言えることですが、背景が非常に綺麗で引き込まれる所にあります。
「新海誠」監督の作品は、近年は現実にある風景を絵にしていることが多いですが、どれも現実よりも遥かに美しく美麗なグラフィックに仕上げていますね。
20年後はわかりませんが、恐らく今から10年後に出回るアニメの映像と比較しても、『君の名は』のグラフィックはトップクラスに秀逸だと思います。
本作には主人公が二人いますが、男の主人公「立花瀧(たちばなたき)」と女の主人公「宮水三葉(みやみずみつは)」は、精神が周期的に入れ替わる所が本作の見所の最大のポイントの一つです。
東京に住んでいる瀧と岐阜県に住んでいる三葉は、互いに一度も会ったことが無い相手にも関わらず、何故か不定期に精神が入れ替わり、慣れない異性の身体と環境を前に、お互いがお互いの生活をメチャクチャにしてしまうという所が前半の見所ですね。
そして、それ以上お互いの生活をメチャクチャにしないために、瀧と三葉はルールをつくり、スマホに精神が入れ替わってしまった時の記録を保存して、お互いに何があったのか報告することを義務づけます。
『君の名は』の映像の中で、恐らく「新海誠」監督が最もこだわった描写は、作中で特に重要なキーとなる「ティアマト彗星」の描写でしょう。
「新海誠」監督は、基本的には現実の世界を美しく描写することにこだわるクリエイターですが、時に幻想的でロマンチックな描写にこだわる時もあり、本作においては「ティアマト彗星」がまさにそれに当たる描写でした。
「ティアマト彗星」や作中の舞台の一つである「糸守町(いともりちょう)」は架空の創作物ですが、「新海誠」監督は現実と非現実を上手く重ね合わせることが非常に上手い作家ですね。
「新海誠」監督の作品は、有名なJ-POPアーティストを起用することが多いですが、本作も挿入歌の全てを「RADWIMPS(らっどうぃんぷす)が担当するなど、その美学を徹底させています。
「RADWIMPS」の曲は、『君の名は』の世界観にぴったりハマっていて、物語を盛り上げるのに大きく貢献しました。
『君の名は』の大ヒットの背景には、「RADWIMPS」の音楽の力もあったのではないかと言われる程で、非常にマッチングしたコラボレーションでしたね。
『君の名は』の最大の見所は、やはり後半の急展開にあります。前半まで微妙な伏線が散りばめられていた『君の名は』ですが、後半で一気に伏線が回収されると共に、壮大な盛り上がりをみせ、美麗なグラフィックと共に視聴者の感情を揺さぶった所が魅力です。
引用: https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51NG3J3tLKL.jpg
どうしても三葉に会いたかった瀧は、三葉の痕跡を追って、長旅の末、「ティアマト彗星」で崩壊した糸守に辿り着くことが出来ました。
糸守の外れにある祠にやってきた瀧は、三葉の口噛み酒を飲み、その後すべって転んだ衝撃をきっかけに三葉と再び精神を入れ替えることに成功。
「ティアマト彗星」が糸守に墜落する日の朝に時空転移した三葉の身体の瀧は、テッシーとサヤちんを説得して、糸守を救う壮大な計画を立てました。
計画は順調に進んでいるように見えましたが、肝心の三葉の父親を説得することに失敗した三葉の身体の瀧は、三葉の魂が本来の自分の身体に転移していることを察知し、再び祠の方に駆けます。
そして、祠を囲むクレーターで瀧と三葉は殆ど初めての出会いをし、互いに気持ちの良い時間を過ごすのですが、それも束の間、三葉は元の時空に戻され瀧の目の前から消えてしまうのでした。
引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/81xN2UvrBzL._SY679_.jpg
このシーンが泣ける理由は、互いに元の時空に戻ってもお互いのことを忘れないように、マジックペンで互いの名前を手に書こうとした瞬間に消えてしまう所です。
しかも、初めて互いを認識している段階で、短い良い時間を過ごした直後に消えてしまったので、どうしても泣けてしまうシーンですね。
引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51s8LcPmYLL.jpg
瀧と三葉は幾度となく精神が入れ替わっていきましたが、精神が入れ替わっていた時の記憶は、再び元の身体に戻って意識が覚醒していくと曖昧になっていきます。
夢と同じで、目覚めた直後はまだ記憶が残っているようですが、日々の雑事に追われていく内に、その時の記憶は保持できなくなってしまうようですね。
引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/91HqXNdHtML._SX522_.jpg
瀧の名前は絶対に忘れないと心に誓った三葉ですが、「ティアマト彗星」の落下から糸守の住民を守るために奮闘している内に、瀧の名前を忘れてしまいました。
そのことの哀しさを誰とも共有できない三葉は、落ちてくる「ティアマト彗星」の脅威と、非協力的な糸守の人々の対応、そして瀧の名前を忘れてしまった哀しみで板挟みになり、絶体絶命の状況の中、それでも助かるために奮闘するしかない所が泣けるシーンですね。
引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/81qJrL2yNTL._SL1500_.jpg
このシーンが泣ける理由は、頼れる友人のテッシーですら三葉の苦しみには関心がなく、三葉は一人で哀しみを背負うしかない所にあります。
テッシーにとっては三葉の「大切な人の名前」なんてどうでもよく、糸守の人々が「ティアマト彗星」から助かるために頑張ることしか関心がなかったわけです。
むしろ、三葉に想いを寄せるテッシーにとっては、「あの人の名前が思い出せない」と哀しそうに訴えてくる三葉の態度は、「ティアマト彗星」が落下してくるかもしれない状況と相まって、鬱陶しいを通り越して全く理解できなかった態度と言えるでしょう。
引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51k%2BCWwHyxL.jpg
放送で住民の避難を促していたサヤちんは役場の人達に捕まってしまい、せっかく上手くいったかもしれなかった三葉とテッシーの作戦は陰りを見せ始めました。
「ティアマト彗星」の落下が迫る中、この状況を打開できるのは娘である三葉しかいないという状況で、三葉は全力で父親の所に駆けていきますが、走り回った疲労と瀧の名前を忘れてしまったショックで転んで立ち上がれなくなってしまいます。
そんな絶望的な状況の中、三葉が目にしたのは、瀧が自分の手に書いた「すきだ」という文字でした。
引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51Zr80mUqbL._SX350_BO1,204,203,200_.jpg
瀧が三葉と出会った時に本当に「すきだ」と書いたのか、それとも時空転移の影響で手に書かれていた文字が改変されたのかは不明ですが(前者であってほしい)、三葉が手に書かれた「すきだ」という文字を見てつぶやいた、作中でも強烈な一言が涙を誘う理由でしょう。
名前を忘れた大切な人に向かって、ついつぶやいてしまった一言ですが、この言葉の直後、再び走り出す三葉に涙せずにはいられない名シーンでしたね。
引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51OYwRojUtL.jpg
時空を改変したのか別のパラレルワールドを創り出したのか不明ですが、瀧の奮闘と三葉の努力で糸守の住民は「ティアマト彗星」の落下から避難することが出来ました。
それから五年、お互いの記憶は殆ど失っていた瀧と三葉ですが、お互いへの好意だけが心の底に残っており、悶々とした日々を過ごしていました。
そんなある日、すれ違う電車の中で互いの姿を確認した瀧と三葉は、衝動的に電車から降り、お互いを探して市街地を走り回ります。
そして、ついに二人は再会し、瀧は思い切って三葉に声をかけるのでした。
引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51OJZgo11zL.jpg
ラストシーンが泣ける理由は、記憶を失っているにも関わらず、互いを見た瞬間に電車を降り、お互いの姿を探し回る所にあります。
お互いへの想いだけが二人を動かし、そして、市街地の階段で再開するも、一度すれ違って通り過ぎようとした所が『秒速5センチメートル』のラストと重なり、バッドエンドを想わせつつも、最後に瀧が勇気を振り絞り三葉に声をかけた所が泣けるポイントだったでしょう。
引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51v%2B1wBxRJL._SX356_BO1,204,203,200_.jpg
『君の名は』が泣けるシーンを紹介してきましたが、やはり後半の方が泣けるシーンが多いですね。
泣けるシーンということで、ほとんどクライマックスのネタバレをしてしまいました。