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【ネタバレ有】「天気の子」の魅力に迫る!少年少女の秘密を徹底考察!

2019.07.25

精密で美しい描写と、少年・少女がお互いのために奔走する姿が特徴的な新海誠作品。3年ぶりの新作『天気の子』もその新海誠作品らしさが存分に詰め込まれた魅力的な作品となりました。そんな『天気の子』について、あらすじのネタバレや、ネタバレ考察をしていきます。

  1. 【天気の子】映画『天気の子』とは
  2. 【天気の子】あらすじ【ネタバレ】
  3. 【天気の子】見どころ①美しい描写【ネタバレ】
  4. 【天気の子】見どころ②未成年という立場【ネタバレ】
  5. 【天気の子】見どころ③人の冷たさ温かさ【ネタバレ】
  6. 【天気の子】見どころ④CMで話題のシーン【ネタバレ】
  7. 【天気の子】見どころ⑤最後まで観てわかる言葉の意味【ネタバレ】
  8. 【天気の子】見どころ⑥『君の名は。』の登場人物たち【ネタバレ】
  9. 【天気の子】考察①帆高と光【ネタバレ】
  10. 【天気の子】考察②陽菜が祈らなかった場合の世界【ネタバレ】
  11. 【天気の子】考察③陽菜のチョーカー【ネタバレ】
  12. 【天気の子】考察④帆高と陽菜の秘密【ネタバレ】
  13. 【天気の子】天気の子についてまとめ

『天気の子』とは、新海誠監督によるオリジナルアニメ映画です。大ヒットとなった前作『君の名は。』から3年、待望の新作となった本作は、『君の名は。』同様の美しい背景と、他の新海作品のような一概に「ハッピーエンド」とは言えないような終わり方が特徴的な作品となっています。

家出をして東京までやってきた少年・森嶋帆高。お金もなく、人も冷たく苦しい生活をしていた彼は、上京するとき船で会った須賀圭介を頼り、そこで住み込みで働かせてもらうことに。そのなかで、以前優しくしてくれた少女・天野陽菜に出会い、彼女とともに仕事をしていくようになります。

まず何と言っても、背景の細やかさや光の加減、派手というわけではないものの、鮮やかな色彩が印象的。新海作品では写真と見まごうほどの精巧な背景が魅力的な部分でもあります。どこかリアルさが感じられるからこそ、まるで自分もそこに行ったことがあるような、実際行ったことがあれば、自分がいたときにどこかで作中のようなことが起こっているのでは、と想像を掻き立てられるのです。

また、今回は「天気」を題材にしており、雨の描写、雲が晴れていく様子、日中の太陽、夕陽が輝く様子などは絵画のような美しさがあります。特に、雲が避け、太陽が姿を見せるシーンは、どこか神々しさすら感じられますね。

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『天気の子』のメイン2人は共に未成年で、一人で生きていくのが非常に大変な立ち位置にいます。帆高は家に帰れば家族がいるので、小学生の弟しか家族のいない陽菜とはまた立場が違いますが、成人さえしていれば家出をしたところで働くことも住む場所もなんとかなります。また陽菜も、彼女が成人していれば弟と一緒にずっと暮らしていくことはそんなに難しいことではありません。

未成年だからこその制約、未成年だからこその窮屈さ、また未成年であるせいで周りの大人に迷惑がかかり、未成年だから無茶も出来る、というものが一心に詰め込まれているようにも感じます。この一人ではどうもできない時期を過ぎた大人は、それを懐かしむのか、諌めるのか、手助けするのか、非常に選択が割れそうですね。

主人公の帆高が物語冒頭でよく口にするのが「東京怖ぇ」という言葉。船で偶然知り合った須田には、命の恩人だということでご飯をたかられ、泊まっていたネットカフェでは濡れて帰るたびに受付の男性に怒鳴られ、ついに帰る場所もなく雨宿りしていた場所ではチンピラに転ばされるという、散々な経験をします。

そんな風に冷たくする人間もいれば、ファストフード店で一杯のスープを夕食に夜を明かす帆高にハンバーガーを奢ってくれるような陽菜、素性もしれない帆高を雇う須田と、そんな同僚を詮索しない夏美など、心優しい人もたくさんいます。「誰かにとって優しい人間は、誰かにとっては冷たい人間」になる可能性がある、人間の二面性を見せてくれるようですよ。

公開前から非常に注目を集めていた『天気の子』。数多くの大手企業がコラボをしており、そのなかには作中に登場までしてしまうものも。SoftBankでは、なんとお父さんが映画に登場。とても一瞬で過ぎてしまうので、知らなければ見落としてしまうかもしれませんね。作中にちゃんと同じシーンがあるので、覚えておくとさらに楽しいですよ。

また、セリフの繰り返しが妙に頭に残る、日清のCM。企業が全面協力しているから出来ることですね。まるでCMのために作られたようなシーンですが、このCMも実際作中に登場します。セリフも丸々一緒なので、CMを見たことがあるとついつい笑ってしまうような場面ですね。このギャグのようなシーンは、前後の話から考えるとだいぶテンションが変わるので、視聴者にとっての息抜きのような部分もあるのかもしれませんね。

映画のCMでも流れる「あの空の上で私たちは、世界の形を決定的に変えてしまったんだ」という陽菜のセリフ、キービジュアルにも記されている「僕と彼女だけが知っている、世界の秘密についての物語」という帆高の文言。

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この2つはモノローグとして物語序盤で出てくるものですが、陽菜の言葉は「これから2人で何かをするのだろう」という予想、帆高の言葉は「選ばれた人だけが知ることができる」という解釈ができます。しかし、物語を観ていくと「2人で何かをするのではなく、何かされたから2人で抵抗した」、「2人にとって決して口外できないこと」であることがわかります。最後まで観てまた冒頭から観ることで、セリフの印象が変わるのも楽しいところです。

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新海作品は、別の作品を彷彿とさせる場面などを新作に取り込んだりしているのですが、『天気の子』はそのままキャラクターを登場させましたね。予告を観ていた方は、「だからあのおばあさんが登場していたのか」と納得してしまうかもしれません。新海作品をずっと追っていた方は、今まで違う登場のさせ方に驚いたかもしれませんね。

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また、瀧と三葉はそこそこの尺で登場し、出ていたことが簡単にわかるのですが、実は三葉の幼馴染である勅使河原と早耶香、妹の四葉も作品には登場しています。勅使河原と早耶香は、初めて陽菜たちが依頼を受けたフリーマーケット会場の観覧車に乗っており、四葉は物語終盤晴れた空を眺めるシーンで登場。四葉はしっかり顔が映るのでわかりやすいですが、勅使河原と早耶香はほんの一瞬なので2回目以降注意して観てみたいですね。

帆高が地元に帰りたくないと願う理由は明かされませんでしたが、顔を怪我している表現があったのできっと何かがあったのでしょう。では、なぜ家出に東京を選んだのかですが、彼は雨のなか一箇所だけ光が降り注ぐ場所を追いかけていました。一度は追いつきますが、光は海のほうへと進みそれ以上追いかけることができません。帆高はその光を追って、東京までやってきたのです。

日高にとっては、その光は「陽だまり」、つまり「陽菜」だったのではないかと推察されます。家出をするほど「追いつきたかった」と願ったことを考えると、物語終盤の一度陽菜と離れ離れになってしまうことへの暗示のようにも感じますし、「陽菜」には追いついたという彼の成長を感じるための部分にも感じます。

一方の陽菜は、その一部だけ光が射す場所を「光の湖」と呼んでいました。そしてそれに導かれるように彼女は光の中心へと行き、そこにあった鳥居を潜ります。このことから、陽菜にとってこの光は「天気を操る巫女」の選定であり、天気を通常に戻す「人柱」の選定だったのではないかと想像されますね。

光の湖が「人柱の選定」であるとすると、帆高は陽菜を人柱にするために光に導かれた可能性も考えられるのではないでしょうか。そもそも帆高と出会わなければ、陽菜は頻繁に力を使うこともなく、人柱としては機能しなかった可能性もありますよね。

陽菜が天気を晴れにしたあとは、押さえつけられていた雨がすべて流れ出すように地上に降り注ぎました。透明な魚のようなものが大量に、もしくは巨大化して降るシーンは、晴れにした代償だと考えられます。では、陽菜が力を使わなければ、雨は抑圧されることなくすべて流れ、そのうち晴れた可能性はあるのでしょうか。

おそらく、陽菜が無理に晴れを作ろうと作らまいと、雨は降り続けたのではないかと考えられます。天気の巫女について話す神主が登場しますが、彼は、昔から雨が止まないときがあり、そういうときに天気の巫女が天と人を繋いだと説明しました。つまり、空を晴れにするにはどうしても、天気の巫女に人柱になってもらう必要があるということです。

物語終盤、「世界はもともと狂っている」と須賀が発言します。雨が降り続ける世界、人柱がいなければ晴れない世界、どちらを選んでも辛い思いをする人がいることを考えると、確かに世界は狂っているのかもしれません。世界が狂っている限りは、雨が降り続けるのではないかと推察されます。

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雫型のアクセサリーがついた首のチョーカー、とてもかわいいですよね。この陽菜のチョーカーですが、彼女が巫女になる前はつけていません。これは、彼女と天を繋ぐ役割を持っていたことが想像されます。おそらく、天にとってこのチョーカーは結婚指輪のようなものだったのではないでしょうか。

陽菜が天へと引き上げられたあと、服やチョーカーは落ちないのに、帆高が左手の薬指にはめた指輪だけは地上に落ちてきました。体がほぼ水分のようになっていたとしても、指輪だけ所持できないというのは、天が2人を引き離そうとしたのではと想像できますよね。また、天から戻ってきた陽菜のチョーカーが壊れている描写もあり、巫女としての能力を失ったこと、天から見放されたことの現れなのではないでしょうか。

また、天があげたであろうチョーカーのアクセサリーは雫型の水色であるのに対し、帆高があげた指輪にあったアクセサリーは丸型のオレンジ色。まるで雨と太陽のようですよね。しかし、雫チョーカーがなくなりオレンジの指輪を選んでも空は晴れない、というのが、なんとも皮肉なものですね。

『天気の子』は、帆高がプロローグで言うように、帆高と陽菜しか知らない「世界の秘密」を綴った話になります。この「秘密」というのは、雨が降り続け、東京の1/3が水没してしまった理由が、2人にあるというもの。雲の上に草原のような場所があり、そこに水の魚のようなものが存在していることも秘密のひとつだとは思いますが、「世界の形を決定的に変えた」という陽菜のセリフを考えるなら、「世界の秘密」は雨が降り続ける世界のことだと考えられます。

帆高は、久しぶりに会った元依頼主である瀧の祖母・立花冨美に、以前住んでいた家のあたりは水没したことを聞かされると反射的に謝りました。しかし、謝った理由を訊かれてもそれに答えることはしません。陽菜を守りたかったのか、後ろめたさがあったのかはわかりませんが、意図的に隠したことが窺えます。

その後、陽菜に3年ぶりに再会した帆高が「僕たちは大丈夫」と陽菜に伝えるのですが、この前に帆高は陽菜にどんな言葉をかけようか迷います。励ますべきかフォローすべきか、迷ったすえ、変わらない彼女の姿に笑顔で「僕たちは大丈夫」と伝えます。これは、この世界の現状を帆高が受け入れた瞬間で、「変えた世界の秘密」を抱えていく覚悟を決めた瞬間でもあるでしょう。そのため、2人の「秘密」とは、「世界が変えられてしまった理由」ではないかと考察されます。

公開前から盛り上がりを見せていた『天気の子』。笑えるような面白い部分もあれば、ハラハラ緊張する場面、悲しさで泣いてしまうようなシーン部分もあり、様々な感情を揺さぶられる作品となりました。ひとつひとつのカットすべてが意味深に見えてしまう、2回目も3回目も観たくなってしまう作品と言えるのではないでしょうか。