『名探偵コナン』とは青山剛昌先生原作の大人気漫画です。アニメも1996年の放送開始以来、長期にわたって人気を集めており、毎年公開される映画も、その度に大ヒットとなっていいます。長い間連載を続ける中で、人気が衰えるどころか人気を増していくというのは、新しい漫画やアニメがどんどん登場する現代においてはなかなか珍しいことではないでしょうか。

高校生探偵の工藤新一は、ある日、黒ずくめの男たちの怪しい取引を目撃したことで毒薬を飲まされ、そのせいで7歳くらいの見た目になってしまいます。元の姿に戻るため、また、彼の周りの人間を巻き込まないため、江戸川コナンとして生活することに。コナンとなって様々な難事件を解決していくなかで、仲間や協力者を作っていき、強大な黒の組織へと立ち向かっていくことになるのです。

『名探偵コナン』に登場する宮野明美とは、黒の組織に所属していた人物です。コードネームは不明で、組織の監視にあった一方で、大学生活を送り、友人と遊べる環境にいた事から、それなりに自由のある立場にあったことが分かります。コードネームが与えられていなかったらしいことから、組織にとってあまり重要な人物ではなかったようでもあります。

年齢は明かされていませんが、宮野明美と赤井秀一が出会ったのが大学に通っていたであろう5年前ということ、子どものころ安室透と面識があることから、24歳〜29歳の間だと考えられます。

登場当時は、広田雅美という偽名を使用しており、年齢も学生を装っていました。また、コナンが阿笠博士以外の人物に、自分の正体が工藤新一だと明かした初めての相手が宮野明美でもあり、コナンが救うことができなかった人物でもあります。最期はジンによって殺害されてしまいました。

コナンの前に現れた謎の少女・灰原哀。彼女こそ宮野明美の妹にして、黒の組織で「シェリー」と呼ばれていた人物です。姉の明美と違ってコードネームで呼ばれていることからも分かる通り、組織の重要人物でした。唯一の存命している家族である姉の死により組織に疑問を抱いた志保は、コナンと同じ薬を飲み、現在は小学1年の灰原哀として、阿笠博士のところに居候しています。

作品に登場する他の兄弟姉妹に比べると、明美と志保は、容姿などあまり似ていない部分もありますが、ヒロインの蘭も特別両親のどちらかに似ているということはないので、そこに深い意味は特にないでしょう。クォーターということを考えると、地毛が赤味がかっているのもそれらしいですよね。

宮野明美は諸星大こと赤井秀一と恋人関係にありました。FBIの捜査官だった赤井秀一は、組織に潜入するため、明美の車にわざとぶつかり交流を持つようになります。そこから2人はどんどん親密になっていき、赤井は妹の志保を通して黒の組織への潜入を果たすのです。

組織に潜入するまで赤井秀一は同じFBIのジョディ・スターリングと付き合っていました。しかし、黒の組織に潜入するに当たって、2人の女性を愛せるほど器用じゃないという理由からジョディとは別れます。ジョディは仕方なく別れましたが、追い詰められたときに赤井の言葉を思い出すなど、まだ彼を慕っている様子が描写されています。

赤井は、FBIの仲間のヘマによって組織に身元がバレて逃亡。その際に明美とも恋人関係を解消します。赤井は作戦決行直前、明美に自分の正体と、これからすることを明かしますが、明美はすべてを承知したうえで付き合っていました。そんな明美に心を動かされていた赤井は、演技ではなく本気で彼女を想うようになり、現在でも、死の直前に明美が送った最後のメールをいまだに保存しています。

彼女からの最後のメールの文面は、途中までしか原作では明かされていません。しかし、そこには、彼女の妹である宮野志保（灰原哀）を守ってほしいとお願いしていたと推測されます。なぜなら、その後、赤井は組織に狙われる立場となった志保を陰ながら見守るなど、明美の意思を尊重した動きをするようになるからです。

上の図でも分かるように、実は、宮野家と赤井家は親戚同士という関係になります。赤井秀一の母親である赤井メアリーと、宮野明美の母親である宮野エレーナは姉妹だったのです。したがって、赤井と明美はいとこ同士ということになります。アニメで見ると髪や目の色が一緒で姉妹感が強いですね。また、コナンはマスカラが伸びてしまった灰原哀を見て、メアリーと似ていると感じています。そこからも血縁というのが感じられますね。

家族を全員失ってしまった志保にとって、母親の血縁者がいたというのはいい知らせかもしれませんね。互いが血縁であると明かされるかどうかはわかりませんが、すべての事件が解決したあと、宮野志保として赤井家の面々と会ってほしいものです。

『黒の組織10億円強奪事件』で組織との取引のために銀行から10億円を強奪する宮野明美でしたが、それには理由がありました。赤井秀一がFBIのスパイという事がバレてしまい、その彼を組織に引き入れた明美に対して不信感を抱いた組織は、強奪事件の計画を持ち出します。

明美は、自分と妹を組織から抜けさせてくれるという条件でその計画を受け入れますが、それは組織の嘘であり、盗んだ10億円のありかを教えなかった明美はジンによって殺されてしまいます。

志保は姉を殺されたことで組織に協力することをやめ、監禁された際に、新一が飲まされた毒薬と同じ薬・APTX4869飲んで自殺を図りました。薬の副作用によって幼児化した志保は、組織から逃走し、同じ境遇のコナンが何かと世話になっている阿笠博士の所に居候することになり、コナン同様、灰原哀という仮初の姿で年齢や素性を隠したまま解毒剤の研究をすることになります。

宮野明美のアニメでの初登場は128話『黒の組織10億円強奪事件』でした。原作では2巻と早々に登場した明美がなぜアニメでの登場がこれほど遅かったのか、ということですが、原作2巻の内容はアニメ13話できちんと描かれています。

しかし、当時黒の組織を取り上げるまでアニメ化するとは考えられておらず、今後の物語に関わってきそうな内容はアニメではカットされています。そのためアニメ13話で描かれた広田雅美は、宮野明美とは別人ということになってしまったのです。その後、無事、アニメ放送の継続が決定し、灰原哀や、黒の組織が描かれるようになったことで、原作2巻の内容を改変して、128話で改めて宮野明美と黒の組織について描かれたのです。

アニメでは、宮野明美は広田雅美という銀行員として登場しており、毛利小五郎たちと銀行に来ていたコナンが先に帰ろうとしていたところで、現金輸送車の襲撃事件に出くわします。博士の発明品であるスケボーで追いかけますが、逃げられてしまいます。盗まれた現金はなんと10億円もの大金だったのです。

強盗事件として捜査が開始されますが、犯人の一味と思われる元レーサーとガードマンが殺害されてしまいます。元レーサーの殺害現場から見つかった口紅と遺留品についていた口紅が一緒であることや、その口紅を持っていたのが宮野明美扮する広田雅美であることから彼女に容疑がかかります。

コナンは強盗事件に関して違和感を感じたことから単独で捜査にのりだします。そして、罠にかかった明美を引き留めようとしますが、結局、明美を説得することはできず、黒の組織のジンに銃で撃たれて死んでしまいます。

最終的な結末は原作2巻と同じですね。少々話が複雑ではありますが、アニメにおいては、アニメ13話の広田雅美と灰原の姉とは別人ということになります。

宮野明美の妹である灰原哀（宮野志保）が登場する回『黒の組織から来た女 大学教授殺人事件』では、灰原の口から姉・宮野明美について語られます。このエピソードは原作18巻〜19巻に収録され、アニメ129話で放送されました。

コナンや少年探偵団のクラスに「灰原哀」という奇妙な少女が転校してきます。小学生にしてはどこか冷めている灰原はクールな態度で近寄ってくる歩美たちをあしらいますが、なぜかコナンにだけは興味をしめします。

その日の放課後に、少年探偵団の元に1件の依頼が来ます。コナンの同級生である俊也くんが兄を探してほしいとの依頼でした。少年探偵団は、灰原も誘って俊也くんの兄の行方を捜し、事件を見事解決します。

物語の後半で、灰原の正体が組織の人間であることが分かり、組織の手がかりを見つけるために広田正巳という大学教授を尋ねます。このエピソードでは、コナンと宮野明美の直接的な関係はありませんが、灰原の回想により宮野明美がどんな人物であったかが視聴者に知らされます。

アニメ『赤と黒のクラッシュ 血縁』は、赤井秀一と宮野明美の出逢いが描かれています。このエピソードは原作58巻に収録され、アニメでは492話で放送されました。

FBIとして黒の組織への潜入をもくろむ赤井秀一は、組織の人間である宮野明美の前に、事故を装って現れます。明美をダシに組織に潜入しようとしていたのです。回想という形ではありますが、宮野明美という人物を知る回としてはとても重要な話でもありますね。また、宮野明美から赤井へ送った最後のメールの文面が確認でき、赤井が灰原哀を気にする理由も考察できる内容となっているため、そこにも注目したいお話です。

宮野明美の声優は玉川紗己子さんです。幅広い役柄をこなす声優として活躍中で、ドラマなどにも出演していた経歴があります。また、テレビアニメ『ムーミン』のテーマ曲をカバーした際には、日本レコード大賞で童謡賞を受賞しています。

名探偵コナンの中で宮野明美の恋人であった赤井秀一の声優・池田秀一さんは玉川さんの実夫です。クレヨンしんちゃんの劇場版アニメでも夫婦共演をされています。『名探偵コナン』の声優キャスティングは洒落がきいていたり、他作品とリンクさせた遊び心などがありますが、これもまたそのひとつかもしれませんね。

宮野明美はすでに亡くなっており、登場も非常に少ないですが、彼女の関係者がコナンの周りにいたり、彼女の両親や妹が組織にとって重要な人物だったことから回想などでたびたびその姿が見られます。今後どれほどその姿が見られるかわかりませんが、回想などでまだ登場すると思われます。今から次の登場が待ち遠しいですね。