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崖の上のポニョ

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【崖の上のポニョ】考察まとめ!宮崎駿監督の伝えたかったメッセージとは?

2021.06.12

毎回多くのファンが作品を考察する、実は難解な宮崎駿作品。今回は『崖の上のポニョ』の考察についてまとめました。『崖の上のポニョ』における津波の意味とは、ポニョと赤ちゃんの出逢いのシーンの意味とは。様々な考察を見て、宮崎駿の伝えたかったことを探っていきましょう。

  1. 【崖の上のポニョ】考察まとめ:作品のベース
  2. 【崖の上のポニョ】考察まとめ:津波について
  3. 【崖の上のポニョ】考察まとめ:三途の川?
  4. 【崖の上のポニョ】考察まとめ:トンネルについて
  5. まとめ
『崖の上のポニョ』は、アンデルセンの『人魚姫』を現代の日本を舞台に描いた作品です。宮崎駿がキリスト教色の強い『人魚姫』のストーリーに納得がいかなかったことが、この作品を制作するきっかけのひとつとなりました。確かに、人間という種族を良く思っていない父親、そんな父親の目をすり抜けて海上へ行くポニョ、そして最終的には「真実の愛が無ければ泡になって消えてしまう」という話になるあたりに、『人魚姫』を感じます。
しかし『崖の上のポニョ』には、もうひとつベースとなっている物語があるのではないか、と考察されています。その物語とは『北欧神話』。何故北欧神話が関係しているという考察が出回っているのかというと、まず一番わかりやすいのがポニョの名前ですね。
ポニョの名前は「ブリュンヒルデ」。ブリュンヒルデとは、北欧神話において英雄たちの魂を主神オーディンの館「ヴァルハラ」に導く戦いの女神「ヴァルキューレ」の長女の名です。後述しますが、他にも北欧神話と重なる部分がいくつかあり、興味深いですね。
『崖の上のポニョ』を代表するシーンが、津波のシーン。ポニョは人間の男の子・宗介と出逢ったあと、父親のフジモトによって海へと連れ戻されてしまいます。宗介に会うため、もう一度陸へ行きたいポニョ。ポニョが父の元から逃げ出す過程で魔力を得ることになり、その力は嵐を呼び、陸に打ち寄せる津波となって、ポニョを宗介の元へ運びました。
引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51-qYIdbtDL.jpg
『崖の上のポニョ』で、津波はあまり恐ろしいものとして描かれてはいません。子供向けのアニメなので、もちろん残酷な描写は避けるでしょうが、それにしても恐怖が薄すぎるのです。宮崎駿は『崖の上のポニョ』劇中でポニョが起こした津波のことを「人の心を浄化する魔法」と言っています。人間によって汚された世界が、愛する人に会いたいというポニョの無垢な願いによって起こされた津波で、浄化されたということなのでしょうか。
津波は圧倒的で何者をも飲み込む死の象徴。そして死たる津波とともに現れたポニョは、やはり魂をあの世へと誘う「ブリュンヒルデ」なのだと感じさせられます。
母・リサを探すため、船に乗って水没した町へ繰り出した宗介とポニョ。二人は途中で、小舟に乗った家族に出逢います。ポニョが婦人の抱いている赤ちゃんに気遣いを示す、彼女の成長を表す重要なシーンなのですが、この小舟が浮いている場所は、三途の川なのではないか、という考察がなされています。
この考察の要因となった情報は、映画のパンフレットに書かれていたという「ボートの婦人は大正時代の人」という情報。映画では宗介のことを「宗ちゃん」と呼んで知っている風だったので、大正時代の人設定はしっくりとこない気もしますが、ともかくそこからここにいるのは既に亡くなっている人間なのではないか、という考察が生まれました。
婦人が大正時代の人間かどうかはともかく、もうひとつ気になることがこのシーンにあります。婦人と赤ちゃんが乗ったボートの他にも、多くの人を乗せたボートが宗介たちの横を通り過ぎます。彼らは「山の上のホテル」に向かうそうなのですが、この「山の上のホテル」とは、あの世のことなのではないでしょうか?
先述しましたが、『崖の上のポニョ』には北欧神話を彷彿とさせるところがいくつかあります。ポニョの本名、ブリュンヒルデはヴァルハラに魂を誘うヴァルキューレのひとり。北欧スウェーデンには「ヴァルハル」という名の山が多くあり、死者は聖なる山で生き続けるという聖山信仰があるようです。山の上ホテルは、死者の行き着く先を示していたのではないでしょうか?
ジブリ作品において、トンネルを通ったり、雲をくぐり抜けたり、何かを「通る」「抜ける」というのは、別の世界に行ったり、物語が大きく動いたりする前のキーワードのようなものです。今回『崖の上のポニョ』でも、トンネルを通るシーンが登場しました。宗介はポニョの手を引いてトンネルに入るのですが、ポニョは「ここ嫌い」と言い、奥に進むごとに身体が魚へ戻っていきます。
注目すべきは、トンネル入口にある「山上公園すぐそこ」の看板と、脇に立っているお地蔵さん。山の上ホテルは、あの世を示しているのではないか、という考察がありました。そのことから、このトンネルもあの世に続いている可能性がある、と考えられます。そして脇にあるお地蔵さん。お地蔵さんは、子供の魂を救済すると言われていますね。
引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51q2tVjO4xL.jpg
ポニョがトンネルを嫌い、と言ったのは、ここを通ってあの世へ向かうと半魚人になり、魚に戻ってしまうことに気づいていたのではないでしょうか?ポニョが人間になるには、宗介が魚のポニョも半魚人のポニョも受け入れなければいけません。しかしポニョは宗介が自分の全てを受け入れてくれるのか不安で、人化を解いてしまうトンネルを嫌がったのかもしれないですね。
「自然との共存」は、宮崎駿作品では欠かせないテーマです。『崖の上のポニョ』では、自然は愛すべき素晴らしいものであると同時に、人間の想像を容易に超える強大な力を持つもの。だからこそ敬意を持って接し、環境を保護していこうという思いが感じられました。
そして未来を支えていく「子供」という存在。子供に愛情というものを教え、それを受け取った子供たちが他人や自然に広げていく。宮崎駿の理想とする世界が、子供にある意味では伝わりやすく、ある意味では伝わりにくいように作られた作品だったと思います。一度で全部を理解しなくてもいい。むしろ歳を重ねるごとに何度か見て、何度も発見を重ねていってほしい。そんなことを感じる作品でした。
そしてやはり「真実の愛」というのも、重要なテーマのひとつでしょう。ベースは『人魚姫』。種族の違いを乗り越え、取り巻く環境の違いも乗り越えて、相手への思いを貫く。そんな思いが見て取れます。そしてこれにより、子供たちに姿形が違っても差別せず、思い遣りを持って相手へ接することへの大切さを説いているのではないかな、と思いました。
『崖の上のポニョ』は他にも様々な考察がなされています。ぜひアニメ『崖の上のポニョ』を見て、作品について自分なりに考えてみてください。何が正解かはわかりませんが、きっとひとりひとりが真剣に考えてくれることを、宮崎駿監督は願っているのだと思います。
サムネイル画像は下記より引用しました。
出典: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/71H6356tIrL._SL1000_.jpg