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崖の上のポニョ

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【崖の上のポニョ】解説まとめ!ポニョがトンネルを嫌っていた理由は?

2021.07.26

宮崎駿監督のもと制作されたジブリ映画『崖の上のポニョ』。『崖の上のポニョ』はこれまでの作品とは違い、起承転結があやふやで意味深な描写の多いストーリーでした。今回は『崖の上のポニョ』解説まとめを作成。トンネルの描写など、不可解な場面やキャラについて解説します。

  1. 【崖の上のポニョ】解説まとめ:作品のベース
  2. 【崖の上のポニョ】解説まとめ:ポニョという存在
  3. 【崖の上のポニョ】解説まとめ:「死後の世界」説
  4. 【崖の上のポニョ】解説まとめ:トンネルを嫌がった理由
  5. 【崖の上のポニョ】解説まとめ:ポニョの両親について
  6. まとめ
『崖の上のポニョ』は、アンデルセンの『人魚姫』を現代の日本を舞台に描いた作品です。宮崎駿がキリスト教色の強い『人魚姫』のストーリーに納得がいかなかったことが、この作品を制作するきっかけのひとつとなりました。確かに、人間という種族を良く思っていない父親、そんな父親の目をすり抜けて海上へ行くポニョ、そして最終的には「真実の愛が無ければ泡になって消えてしまう」という話になるあたりに、『人魚姫』を感じます。
そしてもうひとつ、ベースとなったのではないかと思われるのが「北欧神話」。ポニョの本名である「ブリュンヒルデ」や、ポニョと宗介の結末が北欧神話のブリュンヒルデとジークフリートに似ていることから、この考察が生まれました。そしてこの考察の信憑性を高めているのが、宮崎駿が映画の構想を練る際に『ニーベルングの指環』4部作の2作目『ワルキューレ』を聴いていたという逸話です。
ポニョの名前は「ブリュンヒルデ」。ブリュンヒルデとは、北欧神話において英雄たちの魂を主神オーディンの館「ヴァルハラ」に導く戦いの女神「ヴァルキューレ」の長女の名です。この名前から、ポニョは魂をあの世に導く存在であることが窺えます。
『崖の上のポニョ』は、死後の世界を描いた作品ではないか、と言われています。起承転結のないストーリー展開が見る人を落ち着かない気分にさせ、意味深な描写、セリフが所々に散りばめられているため、そのような考察が生まれたのでしょう。この「ポニョは死後の世界を描いた作品」説を解説していきたいと思います。
海と陸、違う世界に生きるポニョと宗介。海はあの世であり、陸はこの世を現しています。ポニョが宗介と出逢い、一度引き離されたものの再び彼に会いに行く際、大きな嵐が巻き起こり、津波が宗介たちの住む町を飲み込みます。ポニョは津波に乗って陸へとやってきて、宗介と再会するのですが……あの世の象徴たる海がこの世の象徴である陸を飲み込んでしまうわけです。
津波とともにやってきたポニョは、魂をヴァルハラに誘うヴァルキューレのひとり、ブリュンヒルデを思わせます。津波が落ち着いたあと、宗介の母であるリサは宗介を残し、勤め先の介護施設の様子を見に行くことに。宗介はリサを探すため、ポニョとともに水没した町へ繰り出すのですが、そこにボートに乗った人々に出逢います。「彼らは山の上のホテル」に向かうそうなのですが、この「山の上のホテル」とは、あの世のことなのではないでしょうか?
その後も介護施設のお婆さんたちが水中で元気に駆け回ったり、行方不明になっていたリサがお婆さんたちと一緒にポニョの母親・グランマンマーレとともにいたりと、不可解なシーンが続きます。とにかくこの映画は全体を通して、脈絡なく不可解なのです。その不可解さが、現実世界―――生の世界から逸脱したものであるという印象を、見る人に抱かせるのでしょう。
ジブリ作品において、トンネルを通ったり、雲をくぐり抜けたり、何かを「通る」「抜ける」というのは、別の世界に行ったり、物語が大きく動いたりする前のキーワードのようなものです。今回『崖の上のポニョ』でも、トンネルを通るシーンが登場しました。宗介はポニョの手を引いてトンネルに入るのですが、ポニョは「ここ嫌い」と言い、奥に進むごとに身体が魚へ戻っていきます。
ポニョがトンネルを嫌い、と言ったのは、ここを通ってあの世へ向かうと半魚人になり、魚に戻ってしまうことに気づいていたのではないでしょうか?ポニョが人間になるには、宗介が魚のポニョも半魚人のポニョも受け入れなければいけません。しかしポニョは宗介が自分の全てを受け入れてくれるのか不安で、人化を解いてしまうトンネルを嫌がったのかもしれないですね。
謎の多いポニョの両親について解説しておきましょう。父親のフジモトと、母親のグランマンマーレ。フジモトは以前は人間で、『海底二万海里』で有名な潜水艦ノーチラス号で乗組員をしていたそうです。元々ノーチラス号のネモ船長は陸での生活に愛想を尽かして海で生きることを選んだ人ですので、乗組員のフジモトが人間嫌いでも不思議ではありませんね。
グランマンマーレは海なる母。つまりは海そのもののような存在です。そのためフジモトとポニョたちだけが独占できる存在ではなく、普段は離れて生活しています。離れてと言っても、彼女は海そのものなので、言葉は交わせずとも常に彼女に抱かれている、という状態ではあるのでしょうが。とても美しい人で、さすが海と言うべきかとっても大らか。ポニョが人間に興味を持つことを厭うフジモトと違い、彼女はポニョの人間に対する興味を応援しています。
不可解な描写と、謎めいたキャラクターが多い『崖の上のポニョ』。普通に見ても興味深い作品ですが、ひとつひとつの描写の意味を想像してみたり、キャラクターの背景を知った上で作品を見てみると、より得るものが多く楽しめる作品となっています。知識や考察を仕入れた上で、何度も見てもらいたい作品ですね。
サムネイル画像は下記より引用しました。
出典: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/71H6356tIrL._SL1000_.jpg