『坂道のアポロン』は『月刊フラワーズ』で連載されていた漫画作品です。作者は小玉ユキさん。現在は『青の花 器の森』を連載されています。小玉ユキさんは長崎県佐世保市の出身で、佐世保市は坂道のアポロンの主要な舞台ともなっている場所です。
親の都合で引っ越してきた薫が、学校で不良だと評判の千太郎と出会ったことで、ジャズを始めるようになります。そこから始まる青春たっぷりの甘酸っぱい恋が坂道のアポロンの魅力です。
舞台となるのは長崎県佐世保市、時代はなんと1966年です。主人公は引っ越してきた人間なので普通ですが、昔から住んでいる住人たちは佐世保弁を使っています。主要な舞台となるだけあってか、アニメ化と実写化の際にも方言指導として声優の宝亀克寿さんが指導を行うなど、本格的な設定がされています。やはり小玉ユキさんの出身地なだけあって、思い入れが強いのかもしれませんね。
坂道のアポロンに欠かせないものはなんといってもジャズでしょう!ジャズを無視しては坂道のアポロンは語ることができません。それくらい、この作品にとってジャズという音楽は重要な役割を占めています。
薫と千太郎を繋げたのはジャズです。薫はジャズを野蛮な音楽、それに対して千太郎はクラシックなんてつまらないとお互いにけん制しあっていました。おまけに二人の出会いもあまり良いものではなく、千太郎は札付きのワルと恐れられていて屋上で会った薫とガンを飛ばしあっていたのです。
そんな二人でしたが、千太郎の力強いドラムを聴き、そしてクラス委員長で千太郎の幼馴染である律子の「二人のセッションが聞いてみたい」というお願いから、セッションを始めます。このセッションをきっかけに、薫はジャズピアノの世界へと足を踏み入れたのです。
また、坂道のアポロンでは途中で千太郎がどこかへ消えてしまう事件が起こります。律子も薫もそのまま散り散りになってしまうのか…?とハラハラする展開の中で、彼らの友情を繋いでいたのがジャズなのです。
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坂道のアポロンの劇中では様々なジャズに触れることができます。ジャズというと敷居が高いように感じてしまうかもしれませんが、ジャズは自由な形式であり、黒人音楽から人種混合音楽へと派生していったジャンルでもあります。演奏するにしても聞くにしても、ジャズらしく自由に楽しめることが大切だと思います。
坂道のアポロンで紹介される楽曲はどれも素晴らしい名盤ばかりです。聞いてみると、あなたの行ったカフェやバーで聞いたことがある曲もあるかと思われます。坂道のアポロンをよく知っている方々であれば、劇中の名場面を思い起こしながら聞いてみると、坂道のアポロンの世界を存分に楽しめることかと思います。
また、アニメのOPはYUKIさん、EDは秦基博さんが担当し、映画の主題歌は小田和正さんが歌っているなど、とにかく音楽には力が入っています。
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ここからはネタバレになっていくのでお気を付け下さい。
親の都合で佐世保へと引っ越してきた西見薫。実家が病院でお金持ち、成績も優秀で恵まれていると思われがちですが、他人から向けられる視線や「自分のことをどう思っているのか」という不安から吐いてしまうほど繊細でした。学校中で知られている札付きのワル、川渕千太郎と出会い、同時にジャズにも出会います。
舞台となるのは1966年の長崎県佐世保市。60年代はモダンジャズやロックが10代の若者の心を捉えていました。そんな時代に生まれた薫と千太郎を繋いだのがジャズです。
物語が進む中で、登場人物たちが次々と別の人物に片思いをしていくことが分かります。薫は律子に、律子は千太郎に、千太郎は百合子へ、それぞれ恋をしていきます。それぞれの想いが一方通行になってしまっているところは、作品が進むにつれて切なくなっていくところです。
途中で薫は律子に告白し、最初の告白では自分の気持ちを伝えただけで終わったものの、最終的には結ばれることになりました。そこに関してはホッとしたのですが、千太郎だけは報われることもなく……百合子は千太郎がジャズの師匠と慕っている淳一と結ばれたのです。もっとも引きずってはいません。
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大筋は漫画版とは変わっていません。よくある原作を知っている人がアニメを見てがっかりするといったこともなく、むしろアニメではジャズを耳で楽しむことができることが、かなり評価されているようです。アニメだからこそ表せた演奏中の躍動感や楽曲は、坂道のアポロンの世界観をより飛躍させていたようにも思います。
違いといえば千太郎の過去の話にあまり触れられていなかったり、薫の大学生活や描かれていない、千太郎との再会が異なっている点ですね。恐らくアニメの尺の関係上、やむを得ずにカットしてしまったことも大きいでしょう。最終回は卒業式からCM明けで大学卒業してましたから。
もうワンクールあれば描き切れていたことは間違いないでしょう。もしくは13話構成にするとか。まあ終わってしまったものは仕方がないので、その部分をちゃんと知りたい方は原作9巻を手に取ってください。
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映画版は設定が異なっている部分があります。まず薫が佐世保へと引っ越してきた理由が父親が亡くなったからですね。原作だと父親は生きていますし、ちゃんと登場しています。前半の展開はあまり変わらず、薫が転校先で千太郎と出会いジャズによって友情を深めていくという流れです。
ストーリーに影響がある設定の変化といえば、千太郎がバイクで事故を起こした時に後ろに乗っていたのが律子だったということでしょうか。原作だと千太郎の妹である幸子が千太郎の後ろに乗っていて事故に遭ってしまいます。その後に千太郎が自己嫌悪に陥って姿を消すところは同じです。
最終回も違っていて、薫が病院で百合子からもらった写真を律子に見せた後で、二人そろって千太郎に会いに行きます。時間制限がある以上、駆け足で唐突な展開になってしまうのは仕方のないことですが、恋愛描写を濃くするよりも薫と千太郎の友情を描いたことについては評価が高いという印象でした。
主人公の西見薫を演じるのは木村良平さん。線が細く繊細な薫が木村さんの演技でより達観した高校生になっています。原作のイメージだと男らしさがないような印象ですが、アニメだと涼し気な雰囲気が出てきて物語が進むたびにカッコよくなっていく印象です。
千太郎を演じているのは細谷佳正さん。学校の不良と言われている千太郎らしく、乱暴で力強い印象を感じる声です。また千太郎の大きさを感じるような演技も印象的です。体も大きいですし、ドラムという大きな音が出る楽器を奏で、大らかな印象を与えている千太郎
映画版のキャストです。西見薫を演じているの知念侑李さんです。Hey!Say!JUMPのメンバーの一人ですね。爽やかなイケメンといった感じですが、背は小さく繊細で内気な薫を演じています。対して千太郎を演じているのは中川大志さんです。笑っている感じは千太郎そのものですね。豪快な感じがとても千太郎らしいと感じます。ちなみにこのお二人は、10カ月かけて必死に楽器を練習してきたんだそうです。映画ではその成果を存分に見ることができます。
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坂道のアポロンのあらすじを漫画・アニメ・映画と紹介してきました。やはり坂道のアポロンを存分に楽しめるのは原作が一番かと思います。アニメや映画は、原作を読んだうえでアポロンに欠かせないジャズを楽しむという形でアニメや映画を見てみると良いでしょう。
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