『ケンガンアシュラ』とは、「裏サンデー」にて連載されていた格闘漫画です。迫力あるバトルシーンと、企業のために死闘を繰り広げる闘技者たちの姿が見所の作品で、筋骨隆々のキャラクターながら、どこか線の細さや美しさも垣間見える作品ですね。

冴えないサラリーマンの山下一夫は、ある日、自分よりはるかに体の大きな相手を叩きのめす十鬼蛇王馬の喧嘩を見ます。生存本能を掻き立てられるような、圧倒的強さを誇る王馬に畏怖の念を抱きつつ、どこか憧れに近いものを感じていました。夢のようなストリートファイトに出会った山下は、翌日思わぬ形で王馬と再会することとなったのです。

ここでは、物語についてネタバレしながら、作中描かれた王馬の仕合結果を紹介していきます。

拳願仕合とは、企業同士が互いの利益をかけて代理となる闘技者を擁立し、勝ったほうの企業がすべての利を得ることができるという、300年ほど前から企業間で脈々と受け継がれているシステムです。表立って開かれているわけではなく、一般には知られていない方法ですが、企業・商人の間では現在でもずっと行われていました。

主人公・王馬の側で、その活躍を見続けることとなるサラリーマン・山下一夫は、所属会社のグループ会長に出会うまでその事実を知ることはありませんでしたが、拳願仕合自体には、表舞台で格闘家として活躍している人もおり、腕自慢の格闘家たちの間では有名な勝負方法であることがうかがえますね。

本作の主人公は王馬ですが、おそらく山下がいなければ彼の物語はここまで続くことはなかったでしょう。王馬との出会いで山下も人間として成長していくのですが、王馬自身も自身の在り方というのを考え、成長していくのです。対戦相手との死闘のなかで技術が成長していく姿はもちろん、こういった精神的な成長も本作の魅力のひとつではないでしょうか。

グループの会長・乃木から、乃木グループが雇った王馬の世話係を任命された山下は、最初は拳願仕合についてあまり肯定的な考えを持っていませんでした。しかし、王馬と一緒に過ごし、拳願仕合についてより深く関わっていくことで、次第にその世界について理解していき、また王馬を支えることを決めたのです。

そもそも乃木が王馬を雇ったのは、王馬が自分が雇っていた闘技者を倒したからというのはもちろんのこと、どうしても欲しい権利があったからです。それが、「拳願絶命トーナメント」の出場権と、拳願絶命トーナメントの優勝者に与えられる「拳願会会長の指名権」でした。これを獲得するために、ふさわしい闘技者が欲しかったのです。

拳願会とは、拳願仕合を行う企業たちが集まってできた会で、417社が加盟しています。「拳願絶命トーナメント」とは、本来、拳願会会長の座をかけて行われる仕合ですが、王馬が参加したときは「指名権」ということになっていました。乃木は、かねてよりの悲願だった、拳願会の改革を実現するためこのトーナメントで優勝することを目指していたのです。

王馬の1回戦の相手は、因幡良。王馬も体格はいいものの闘技者としては巨漢というほどではないですが、この因幡はそれ以上に華奢な人物です。床につくほどの長い髪を有しており、その髪を使って相手と戦うというなかなかにトリッキーな戦い方をする相手ですね。トーナメントに出場する闘技者で、本業は暗殺者という相手なだけあり、王馬も最初から死闘を繰り広げることとなります。

普通に格闘すれば、おそらく王馬が勝つとは思いますが、髪を使うというその戦い方に、王馬は最初劣勢を強いられますが、「前借り」という最終奥義を使用することによって勝利。しかし、この「前借り」は体に大きな負担をもたらし、脳を損傷した結果、王馬は今は亡き師・十鬼蛇二虎の幻覚を見るようになってしまいます。技の副作用ではありますが、弟子に無闇に命を削らせたくないという二虎の想いが感じられますよね。

2回戦の相手は、呉一族という有名な暗殺者の一族と対戦。2回戦目ながら、お互いに全身全霊とかけたまさに死闘という戦いを見せました。1回戦で見せた「前借り」に似た、潜在能力を引き出す「外し」という技を使い、互いに肉体の限界を超えた死闘を見せることになります。

王馬の使う「前借り」は、この「外し」に対抗して編み出されたとされますが、肉体強化という名の人体改造を代を重ねてゆっくり行ってきた呉一族に対し、己の身1代のみの王馬はその不可に耐えられず、一命はとりとめたものの、おおよそ戦うことなどできないほどボロボロになってしまいます。

数日眠り続けやっと目覚めた王馬は、トーナメント中にクーデターを起こした、王馬と同じ「前借り」と使う人物を倒すものの、体の状態は最悪のままでした。そんな王馬を助けたのが呉一族の治療。仕合後、お互いを尊重しようとするのは、やはりバトル漫画の見所ですよね。

戦えるほどには回復したものの、体は変わらずボロボロな王馬に対し、山下は棄権するよう説得します。これまで王馬を世話してきた山下の気持ちを考えれば当然ですよね。しかし、王馬は自身の命の残量を自覚しており、山下と話し合いの末、出場することに。

3回戦の相手となったのは今井も、王馬同様ボロボロの状態でした。天才と呼ばれるほど、闘技者として素晴らしい才能と技術を持つ今井は、その呼び名の通り、王馬を死に追い詰めるほどの攻撃を見せます。しかし、王馬も死闘の末、自身の感覚を研ぎ澄まし、戦いを制することに。

拳願会の会長の指名権を得るための仕合だったトーナメントでしたが、「絶命」と名のつく通り、上位に行くほどまさに命を失うほどの死闘ばかりが待っていますね。

準決勝の相手となった若槻は、20年以上闘技者として活躍している人物です。乃木は、自分に指名権が来るよういくつか自社枠を設けており、この若槻もその相手でした。そのため、どちらが勝ってもよかった乃木は、満身創痍の王馬にわざと負けるよう話を持ちかけてきましたが、山下と王馬はそれを拒否します。2人がこのトーナメントに命をかけることを決めたということがよくわかるシーンですね。

この仕合では、今までのような互角さはなく、最初は一方的に責められるという展開が続きます。王馬は奥義を使うものの、それでも相手を倒すことができず、ついに負けてしまうのか、と思ったところで山下が王馬を応援。それに応えるように王馬は辛勝します。

準決勝は山下と王馬の絆の強さが非常によく分かりますね。王馬にとって、山下はどこか父のようにも思っていたのかもしれません。

ついにむかえたトーナメント決勝。相手は歴代対戦相手の誰よりも強く、王馬は「前借り」を常に使ったうえで、二虎流の武術を繰り出す、まさに全身全霊の攻撃を黒木に仕掛けるものの、歴戦の強者である黒木にはなかなか通じません。体の限界をとっくに超えていた王馬は「前借り」を使うこともできなくなり、決死の覚悟で放った一撃も防がれ敗れることに。

ここまで連勝を重ねてきた王馬でしたが、残念ながら敗北してしまいましたね。また、『ケンガンアシュラ』のラストネタバレとなってしまいますが、この最後に放った一撃により、王馬の体は修復不可能なほど破損し、ついに命を落としてしまいます。王馬の死を受け、山下は拳願会の在り方を変えるべく、新たに前を進むこととなったのです。

『ケンガンアシュラ』について王馬の仕合結果のネタバレを中心に紹介してきましたが、作中絵は王馬以外の仕合も丁寧に描かれています。王馬をはじめとした闘技者の死闘はもちろんのこと、拳願仕合を通して深まる絆、山下と王馬の成長など、精神的な部分も見所の作品です。すでに続編も始まっており、続編『ケンガンオメガ』では、その後の山下たちを見ることができますよ。