進撃の巨人は漫画、TVアニメ、劇場版アニメと大人気です。その原点とも言える作品、進撃の巨人0巻が存在します。DVD、Blu-ray版「進撃の巨人1」の初回特典で、読み切り漫画として付属していました。いつ頃描かれ、その気になる内容や本編に対する伏線の有無など紹介します。ネタバレを含みますので注意してください。

進撃の巨人0巻は、進撃の巨人の作者「諌山創（いさやまはじめ）」が当時20歳で、2006年に開催していた、講談社主催のマガジングランプリに応募した読み切り作品です。

全65ページで構成される読み切り漫画、進撃の巨人0巻は、見事に佳作を受賞しました。なお、進撃の巨人0巻は本編と比べると内容が異なっています。ネタバレする前にまずは以下の本編の考察記事を、一読すると分かりやすいでしょう。

ここからは読み切り漫画「進撃の巨人0巻」を、ネタバレを含みながら内容の紹介と、本編への伏線があるのか？詳しく考察していきます。

進撃の巨人0巻は、「人類は滅亡の危機を迎えていた。」と、衝撃的なオープニングで幕を開けます。100年前に、人類による地球の環境破壊に危機感を感じた宗教団体が、巨人を創り出し環境保護を目的とした、巨人による「人類駆逐計画」が遂行されました。この作戦により人類の約8割が駆逐され、100年後の現在も巨人と人類との争いが続いています。

人類駆逐計画によって生み出された巨人は、地球の環境保護を目的としているために、人類以外には攻撃を加えることはありません。自然を守るために森林にある樹木などには手を出さないことを知った人類は、巨人の脅威から身を守るため、大量の樹木で壁を築くようにしました。まるで樹海の真ん中に穴を開けたかのような空間を作り、自分たちの居場所を構築したのです。

進撃の巨人0巻の主人公は「むらくも二等兵」です。ある日、むらくもは先の巨人との戦闘で唯一生き残った実戦経験者である、とのうわさを聞き付けた「つばき」と名乗る子どもがむらくもの前に現れるのです。むらくもを師匠と仰ぎ、戦い方の指導を仰ぎに来ました。しかし、むらくもはつばきの願いを断ります。

むらくもは、以前に巨人と相まみえた記憶がなかったのです。そして巨人は人に化けるという町の人達のうわさが本当ならば「自分も巨人なのかもしれない、巨人の正体は人類かもしれない」と思ったむらくもは、つばきの身を案じ弟子入りを断り続けました。

つばきは、むらくもへの弟子入りを諦めず何度も嘆願しにいきます。「むらくもが巨人であるなら私はとっくに食べられている。だから大丈夫だ」と何度も頼みます。しかし、むらくもは首を縦に振りません。自身が巨人かもしれないという疑念が拭えないからです。

数日たったある日、つばきが戦い方を覚えたいのは、巨人に両親を殺された復讐のためだと知ったむらくもは、その姿が自身の過去と被って見えました。つばきの思いを知ったむらくもは「素振りを毎日100回やることができたなら戦い方を教えてやる」そう約束して、つばきの弟子入りを認めることになります。

つばきの弟子入りを認めてから数日たったある日、むらくもは町でいつものように仕事をしていました。すると、むらくもがずっと信用していた先輩のたかなみが、むらくもは巨人になれる人間だと軍に進言し、その話を聞いた軍は、所属の05部隊にむらくもを拘束するよう命じます。周りを囲まれ装備を外し投降するよう言われたむらくもは、指示に従い装備を外そうとしました。

言われた通りに装備を外し、投降しようとしていたむらくもでしたが、何か異変を感じます。突如むらくもは自身を囲んでいた者の一人に切りかかったのです。切りかかった相手は、かつて巨人に捕食されたむらくもの父でした。切られた父は巨人へと変化します。周りにいた数名も巨人に変化していきました。その光景を見たたかなみは勝てないと失意のどん底でしたが、むらくもは諦めず巨人に戦いを挑みます。

二本の包丁で無謀にも巨人に立ち向かったつばきをたしなめ、果敢に巨人立ち向かうむらくもは巨人の弱点である主核を見つけ、たかなみに伝えます。それを聞き戦いに挑んだたかなみは、無情にも巨人に捕食されてしまいました。その後も果敢に一人で巨人に立ち向かうむらくもでしたが、力及ばず巨人に倒されてしまいます。しかし、むらくもの亡骸から突如巨人が出現しました。

巨人化したむらくもには自我があり、知性もあったのです。むらくもは巨人化したその力を使い、次々に巨人を倒していきます。だが、むらくもの力及ばず弱点を攻撃され、最後の巨人と共に力尽きてしまいました。

進撃の巨人0巻の物語の最後に、「100年の中で唯一巨人をうちのめした武器は、純粋な正義の心だった。」その言葉を残し進撃の巨人0巻はエンディングとなります。

読み切り漫画「進撃の巨人0巻」の、あらすじと内容を紹介しました。進撃の巨人0巻は本編に対する伏線はあったのでしょうか？

進撃の巨人0巻では、巨人が登場した理由が地球の環境保護を目的すると明記されています。本編では「1800年前にエルディア人の祖先である「ユミル・フリッツ」と大地の悪魔が契約をかわし巨人の力を手に入れた」とあります。この時点では明確な巨人の登場理由が明かされていませんでした。

しかし、進撃の巨人0巻では宗教団体による人類駆逐計画のために巨人を登場理由としているように、本編でもウォールマリア、ローゼ、シーナの3つの壁を、3つの女神と崇める宗教団体「ウォール教」の存在がありました。壁や巨人の秘密を知っていると思われるウォール教の存在が進撃の巨人0巻からの伏線となっています。

敵であるはずの巨人の正体は人類でした。進撃の巨人0巻ではむらくも、本編ではエレンが巨人を倒す巨人であるように、主人公が巨人であることも伏線となっています。

本編の主人公、エレンと進撃の巨人0巻の主人公、むらくもには通じる点が多くあるでしょう。まず、生い立ちについてもエレンは母親を、むらくもは両親を巨人に捕食され亡くしています。巨人を憎み倒すこと、ただそれだけを考えていました。

言葉の端々にも似通っている点があります。エレンが「人類は巨人には負けない、俺たちは自由だ！」と言うセリフも、むらくもと通じるものがあり同じような思想の持ち主と言えるでしょう。

伏線は考えていなかったとしても、進撃の巨人0巻は本編に通じるものが多岐にわたってあります。

ミカサとつばきにも類似点が見受けられます。まずは、ミカサもつばきも両親を亡くしていることです。身寄りのないミカサはエレンの元に身を寄せ共に行動し、つばきはむらくもの元に身を寄せ弟子という立場ながら共に行動しています。少し行動が無鉄砲な所も共通点と言えるでしょう。

しかしながら、進撃の巨人0巻の作画タッチなどやキャラクターの性格をよく考察すると、むらくもはミカサに、つばきはエレンに似ているように思えます。本編では、むらくもとつばきを足して2で割ったのが、エレンとミカサではないでしょうか。

進撃の巨人0巻と本編では、知性巨人への成り方の内容に相違点が見受けられます。進撃の巨人0巻では、巻末に知性巨人になるためには、純粋な正義の心を持つものとあります。一方、本編では無垢の巨人が始祖の巨人が創り出したとされる、九つの知性巨人を捕食することで知性ある巨人の力を継げるのです。

ただ、始祖の巨人も未だ謎が多く残っており、なぜエルディア人であるユミルの民が巨人になれるのか？その内容は開示されていません。巨人になぜなれるのか、進撃の巨人0巻でも本編でもあやふやな内容になっているのは、伏線となっているのかもしれません。

ネタバレ内容を含みながら進撃の巨人0巻を解説してきましたが、進撃の巨人0巻が今の大人気アニメ、漫画の進撃の巨人の礎となったのは間違いありません。人類は巨人に負けない。このコンセプトは同じだといえます。何をもって正義なのかは解りませんが、進撃の巨人は正義を貫く作品、純真な思いを描いた作品なのです。